今回は、未成年者と親権者の利益が相反する場合について考えます。
1 相続人の中に未成年者がいる場合の遺産分割手続きについて
例 夫が死亡し、相続人が妻と二人の未成年者の子供である場合の遺産分割
手続きについて
この例の場合、妻は、二人の未成年者の代理人として、遺産分割協議をすること
ができません。
妻は、子供の親権者であり、親権者と未成年の子の間で遺産分割をする行為は、
相互に利益が相反する行為(利益相反行為と言います。)となるからです。
この場合、2人の子のために、家庭裁判所に申し立てて、特別代理人を選任して
もらわなければなりません。特別代理人は、未成年者ごと別に選任してもらう
必要があります。
そして、その特別代理人2人と妻が遺産分割協議をすることになります。
もし、特別代理人を選任せず、親権者が自分と未成年者の代理人を兼ねて遺産分割
協議をしてしまった場合、その遺産分割は無効となります。
但し、未成年者のうちで、結婚したものがいる場合は、法律上成年に達したものと
みなされるので、(成年擬制と言います。)自ら遺産分割協議をすることができます。
2 父親が債務者で、父親、母親及び未成年者共有の不動産に抵当権設定登記をする
場合の手続きについて
この場合も、債務者の父親のために、未成年者が抵当権の負担を負うことになるので、
利益相反となります。未成年者のために、家庭裁判所に申し立てて、特別代理人を選任
してもらい、母親と特別代理人が未成年者を代理して、金融機関と抵当権設定契約をし、
その登記をすることになります。
家庭裁判所に提出する特別代理人選任申立書の申立ての理由の記載は次のようになります。
申立ての理由
未成年者の共有する物件に抵当権を設定するため。
その詳細
申立人A(父親)が、株式会社B銀行から、金1000万円を借り受けるに際し、その
債務を担保するため、申立人A、申立人C(母親)、未成年者Dが共有する別紙物件目録
記載の不動産に債権額金1000万円の抵当権を設定するため。
司法書士・行政書士 福満賢一