事務所通信
相続人が誰もいない場合の手続きについて
2018/06/07
相談例 私の家を借りていた身寄りのない独居老人が死亡し、私がお葬式を出しました。
家賃数ヶ月分が滞納しております。葬儀代や家賃を老人が残した預金から支払ってもらえ
るでしょうか?
相続人が不存在の場合、老人に債権を持っている方も勝手に老人の預金を引き出すことは
できません。家庭裁判所によって選任された相続財産管理人が、預金などの老人の相続財産
を管理し、相続人をさがし、相続財産を清算する手続きを行います。
その手続きにより、あなたは、家賃などの支払いを受けることになります。
相続人不存在の場合の手続き
1.利害関係人または検察官の申し立てによって、家庭裁判所は、相続財産管理人を選任
します。相続財産管理人の選任を官報で公告します。公告期間は2か月です。
2.官報公告後、2か月以内に相続人が現れない場合には、管理人は、2か月以上の期間
を定めて、相続債権者及び受遺者に対する請求申出の公告をします。
債権者であるあなたは、この段階で、老人に対する債権(葬儀費用、滞納家賃)を相続財産
管理人に申し立てをすることが必要です。
3.家庭裁判所は、管理人又は検察官の請求により、6か月以上の期間を定めて、相続人の
捜索の公告を行います。相続人の不存在を確定させる公告です。
戸籍上相続人となりうる者がいないとしても、本当に相続人がいないとは言い切れません。
被相続人が生前に認知していなかった非嫡出子がいることもあり得ますし、戸籍上は他人の子
となっている子が、実は被相続人の子である場合もあり得ます。
3度の公告期間中に相続人となりうる者が申立てをしなければ、相続人不存在が確定します。
そうなるともはや、相続人や債権者、受遺者は、その権利を主張することが出来ません。
そして、特別縁故者がいなければ、相続財産は国庫に帰属します。
特別縁故者とは、亡くなった方と生計を同じくしていた内縁の妻や、亡くなった方の療養看護
に努めた方などです。相続人不存在確定後3か月以内に家庭裁判所に遺産の全部または一部を
払ってもらう申立てをすることが出来ます。
司法書士・行政書士 福満賢一